「都市」ではなく「地域」という言葉の意味するものは何でしょうか。それは第1に、必ずしも「都市」という高密化・高層化していく市街地空間をデザインするのではなく、歴史的な街並みや風景を再生させたり、コミュニティ空間を維持したり、あるいは「田園」や自然環境の保全をテーマとしていることです。第2に、フィジカルな空間をデザインするだけではなく、その背景にある地域社会や歴史的文脈を読み取り、空間を形づくっているものの根幹からデザインを検討していくことです。ここ数年のうちに日本の人口は、近代以降初めて自然減少に向かいます。経済成長もままならない状況であり、右肩あがりの都市の成長はありえません。地方ではすでに「都市の解体」が始まっており、人は大都市と農山魚村の間を「場所の質」を見極め選択しながら居住し始めるでしょう。

 また、「計画」ではなく「デザイン」という言葉の意味するものは何でしょうか。近代は「計画」に対する過剰な妄想から始まりました。都市と建築の分野でも、建築家や専門家が行政とともにトップダウンで描く計画は、多くの場合市民の猛反発をくらいほとんど実現しませんでした。この苦い経験から「市民参加」が始まり、わが国においても「多様な民主主義」の可能性が見えてきました。また第2に、「建築」というものは単に建物単体のみを指すのではなく、建物を取り囲んでいる周辺環境までを含むものです。市民との対話と協働作業を進めるスキルを身につけるためには、まず「建築」のデザインができなければなりません。問題を解決するための戦略的なプランニングを行い、具体的に空間をデザインし、分かりやすくプレゼンテーションするのです。これからの専門家に必要なものは、まちづくりの現場に密着し、市民の発意を促しながら将来のイメージを多様な市民間で共有し、ともにデザインを実現していく能力なのです。
 我々は、大学の中だけではなく広く社会の中に飛び込んで、市民や様々な専門家、学生達と協働しながら研究活動を展開しています。本拠地の研究室は芝浦校舎内にありますが、他にも研究活動拠点となる「まちなか研究室」を中央区月島と福島県二本松市に開設しています。
 単に研究成果を蓄積するだけではなく、研究が確実に社会に貢献することと、まちづくりを実地的に体験した人材のネットワークを築き上げることを目指しています。


  志村研究室(地域デザイン研究室)
 
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